島根県中山間地域研究センター
人口減少に悩む中山間の地域マネジメント政策の提言にMapInfoを利用
全国で初めての中山間地域の総合研究開発機関

「島根県の人口は世田谷区の人口とほぼ同じなのです。」という島根県中山間地域研究センター地域研究課主任研究員である藤山浩さんの言葉には、地方の中山間地域、その中でも特に問題が深刻な島根県が抱える過疎の問題が実感を伴って認識されてきます。でも、その一方で、「島根県の人口はここ100年ほとんど変わっていない。それでも十分やってこれた。ニュージーランドでは、山間部の人口密度は島根県より格段に低いが、住民は頻繁に交流し、豊かな生活を送っているのです。」という言葉からは、今後も地域マネジメントを誤らなければ、過疎が地域を壊滅させるという一般的な認識通りには経緯しないだろうという自信のようなものも感じられます。
島根県中山間地域研究センターは、1998年に島根県赤来町に全国で初めて中山間地域を対象とした研究開発機関として設立されました。「中山間」という言葉は一般的には耳馴染まない言葉ですが、平たく言えば平野部以外の地域と言い換えられます。中山間地域は日本の国土の7割を占めていますが、島根県では松江市と出雲市を除くほとんどの地域が、この中山間地域に該当するそうです。これらの地域では過疎化の問題が顕著で、住民の生活スタイルにも影響を与えています。

住民参加型のWebGIS |

致達圏計算
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人口減少に悩む中山間の地域マネジメント政策の提言にMapInfo® Proを利用
島根県中山間地域研究センターでは、このような問題を抱える中山間地域に関する研究や政策提言をGISを利用しながら客観的にまとめる作業を行ってきました。例えば、中山間地域の集落ごとの分布図にバス路線情報を重ねた上で、病院までの通院時間が30分圏のエリアを把握することで、病院へのアクセスが不十分な集落が明らかになります。まるで地図に聴診器をあてるように、様々な情報を地図から得て、いろいろな主題図をまとめ上げていきます。事実に基づいた提案を行政に対して行い、新たな病院の設置や病院までのアクセスを改善するための道路改良などの提言を行っています。
このような作業は、島根県や島根大学で従来から導入実績があった、MapInfo® Proを導入することに障害はありませんでした。
住民参加型のWebGISシステムで住民参加型の地域づくりをめざす
提案された政策は実施されなければ意味がありません。また、実施されたとしても、上からの押し付けによるものでは継続性がもたらされません。そこに生活する人たちが意味を理解し、自分たちの手で実行していくことが重要だと、藤山さんは考えています。専門家により押し付けられた政策やシステムではなく、普通の人たちが政策の意味を理解し、行動し、情報発信することによる地域マネジメントが、中山間地域を再生させ活性化をもたらす、ということです。この目的を実現するために、「中山間地域情報ステーション」という住民参加型のWebGISを導入し、着々と成果を挙げているのです。
MapInfo®MapXtreme® によるWebGISシステムの構築
「中山間地域情報ステーション」で導入されているWebGISシステムには、MapInfoのウェブマッピングツールである MapInfo MapXtreme
for Windows と MapInfo SpatialWareが利用されています。
MapInfo MapXtreme for Windows はサーバベースのマッピングエンジンであり、島根県中山間地域研究センターに設置されたサーバに、25000分の1の地形図、プロアトラスラスター(標準版)、道路地図、航空写真、独自に調査した集落情報などとともにインストールされ、運用されています。また、MapInfo
SpatialWare は空間データをデータベース内で管理するためのツールで、空間インデックスをデータベース内に持たせることで、データの検索の速度を上げ、高速な地図の提供を助ける働きをしています。
これらのMapInfo製品が選択された要因として、すでにMapInfo® Pro が業務で幅広く利用されており、そのデータがそのまま利用できたことをはじめとして、MapInfo
MapXtremeの操作性のよさや低コストでの導入が挙げられます。
情報発信・発見マップ、「ダス」シリーズ

「中山間地域情報ステーション」の利用者はインターネット回線を通じてサーバに接続し、40種類を超えるさまざまな地図にアクセスすることができます。利用者は、単にインターネットにアクセスして「地図を見る」だけではなく、利用者の身近で得られる情報を「地図に書き込む」ことができます。利用者が地域の隅々まで広がることで、地域の隅々まで「神経系」を張り巡らすような働きが期待できるわけです。
たとえば、河川流域の自然環境をテーマにした「つなぐダス」では、島根県東部を流れる神戸川の生物調査・水質調査を、流域の29の小中学校の1108名の児童・生徒により、56箇所の地点で行い、このデータを「つなぐダス」で表示される「神戸川環境マップ」上に直接インターネットを通じて登録して作成していきました。
このような環境調査は、通常専門家により実施されることが多いのですが、地域住民により、住民自身が生活の舞台とする場を調べてレポートする、という一連の行動が、地域問題・環境問題に対する意識向上にもつながっていくことが期待されています。
そのほかにも、イノシシに代表される鳥獣被害の情報を共有するための「けものダス」や地域のコミュニティ活動を情報発信する「地域活動ダス」、小中学校の総合学習の教材としてWebGISを利用する「スクールダス」などの、さまざまな「情報発信・発見マップ」が展開されています。
WebGISによる情報発信の拡大

さらに、この動きは中山間地域研究センターに留まらず、島根県全体にも広がりつつあります。
「しまね森林情報ステーション」では、5年ごとに調査する森林の状態を地図に表現して閲覧できるようにしています。情報共有という側面はもちろんですが、森林の状態を公開することにより、島根県全体で市民参加の森づくりに向けた情報提供を行い、環境面からの地方の貢献をアピールする、という側面もあるそうです。
今後の展開
ここまで成功を収めている、MapInfoを利用したWebGISのシステムを、さらに発展させるべく、次なる取り組みについて、藤山さんに聞いてみました。
現在のWebGISのシステムは、どうしてもPCがベースにならざるを得ないのですが、情報の速報性と入力の難しさがどうしても避けられません。この状態を改善するために、携帯電話からの情報ステーションへのアクセスを計画しているそうです。最新の携帯電話にはカメラもついているので、現地の状況を撮影して、情報ステーションに登録すれば、速報性だけではなく、より高度な画像情報も伝えることができます。さらに、GPSを搭載した携帯電話なら、意識的に地図に登録しなくても、情報が地図に登録されるというメリットもあります。
MapInfo MapXtremeをベースにした開発で、技術的にはすでに実現可能なこのシステムの登場により、「島根県中山間地域情報ステーション」がさらに幅広い情報を発信する、住民参加型のWebGISとして、よりパワーアップするのが楽しみです。
島根県中山間地域研究センター 情報ステーション
MapInfoの紹介
株式会社バーテックスシステム